
#228 ラヴェルとドビュッシー、それぞれの『ヴァイオリン・ソナタ』(3)
12/12/2025 | 12 mins.
今週はクロード・ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタをお届けします。フランスを代表するドビュッシーとラヴェルという2人の作曲家が、人生の最後にヴァイオリン・ソナタを書いたのは不思議な偶然でしょうか。ドビュッシーは、この曲で調性にかなりこだわっており、ト短調(g-moll) を使用しています。これは、ドビュッシーの弦楽四重奏曲もト短調であることから、弦楽器の調弦との関係で、楽器の性能を活かしやすい調性であるためと考えられます。ドビュッシーの作品としては珍しく、三楽章形式の楽章間のバランスが非常に良く取れています。この曲は亡くなる1年前に書かれ、初演は1917年5月5日にサル・ガヴォーで行われました。ドビュッシー自身がピアノを弾き、ヴァイオリン・ソロはガストン・プーレという人物が務めました。その息子であるジェラール・プーレもヴァイオリニストで、父親が書き残した弓使いや指使いを校訂した楽譜を出しており、日本にも度々訪れてこのドビュッシーのソナタを演奏しています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ヴァイオリン・ソナタ 第二番 ト長調』 スヴェトリン・ルセフ/ヴァイオリン(Strad. Violin1710"カンポセリーチェ") 上田晴子/ピアノ(2018年4月18日浦安音楽ホール)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

#227 ラヴェルとドビュッシー、それぞれの『ヴァイオリン・ソナタ』(2)
05/12/2025 | 27 mins.
今週もラヴェルのヴァイオリン・ソナタ第二番をお送りします。この作品は、ソナタという形式をとっていますが、各楽章が8分、5分、3分と次第に短くなる独特な構造をしています。また、長らく存在が噂されていたヴァイオリン・ソナタ第一番ですが、生誕100年記念の際、その幻の第一番が発見され、第1楽章がようやく出版されました。この楽章を聞くとラヴェルの師であったフォーレの作風に酷似していて、それが故かラヴェルが作曲を中断または破棄したのかもしれません。第2楽章のジャズ的な要素は、意外にもラヴェルがアメリカを訪問する前年の1927年に書かれていたのですが、その後のキャリアで『ボレロ』を生み出すに至った背景としての1928年のアメリカ旅行の意義にも少し触れます。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ヴァイオリン・ソナタ 第二番 ト長調』 スヴェトリン・ルセフ/ヴァイオリン(Strad. Violin1710"カンポセリーチェ") 上田晴子/ピアノ(2018年4月18日浦安音楽ホール)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

#226 ラヴェルとドビュッシー、それぞれの『ヴァイオリン・ソナタ』(1)
28/11/2025 | 23 mins.
今回より4回にわたって、モーリス・ラヴェルとクロード・ドビュッシーが晩年ともに手がけた『ヴァイオリン・ソナタ』をお届けします。ラヴェルの場合、中期に『ダフニスとクロエ』のような大きな曲を書き、その後はだんだん編成が小さくなり、最後は『クープランの墓』や『マ・メール・ロワ』のように音がどんどん少なくなっていくという作風の変化がありました。ドビュッシーもまた、晩年に来て、ヴァイオリンとピアノという、ある意味で最も小さい編成の曲に取り組んでいます。大規模な作品で知られる彼らが、人生の終わりが見えてきたような時期に、こぢんまりとした編成の形式に収まったという点で不思議な共通点です。ラヴェルは実際にはヴァイオリン・ソナタを2曲書いていますが、一般に知られているのは第2番です。これはラヴェルがアメリカ旅行に行く前の年の1927年に書かれましたが、意外にも第2楽章にはジャズ的な要素が見られます。また、伴奏の調とメロディの調が最初は異なり、後に一緒になることも特徴的です。第3楽章には、終始引き続ける「無窮動」のような部分が含まれており、ヴァイオリンの運指(フィンガリング)において難しいことが書かれています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ヴァイオリン・ソナタ 第二番 ト長調』 スヴェトリン・ルセフ/ヴァイオリン(Strad. Violin1710"カンポセリーチェ") 上田晴子/ピアノ(2018年4月18日浦安音楽ホール)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

#225 2本の糸を紡ぐようなルクレール『2つのヴァイオリンのためのソナタ』
21/11/2025 | 31 mins.
今回は、バロック時代の作曲家ジャン=マリ・ルクレールの『2つのヴァイオリンのためのソナタ』をお届けします。バロックという言葉は、もともと「バロッコ」(Barocco)という言葉に由来し、これは「歪んだ真珠」を意味すると言われています。バロック音楽は、それまでの安定した教会音楽に対して、楽器の発達と新しい奏法の登場によって、例えばヴィヴァルディの『四季』など、より速く、豊かに、そして劇的に動く表現力を獲得した新しい時代の音楽を指しますが、これが当時の人々にとってはとても過激な音楽に聞こえたのではないかと考えられます。フランスでは、ルイ14世が自ら舞踏(バレエ)を踊った影響で、その音楽文化は舞踏と強く結びつきました。このルクレールのソナタにおいても、3拍子系のジグや2拍子系のガボットなど、舞曲のステップのリズムが各楽章に反映されています。ルクレールは、ルイ15世の時代にヴェルサイユ宮殿に呼ばれ、またオランダ貴族の宮廷(オラニエ公家)で楽長を務めるなど、高い地位にいましたが、最後は貧民街で惨殺体で発見されるという悲劇的な最期を遂げています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】ジャン=マリ・ルクレール作曲 『2つのヴァイオリンのためのソナタ』 ステラ・チェン /ヴァイオリン(Strad. Violin1708"ハギンス" イム・ジョン /ヴァイオリン(Strad. Violin1717"サセルノ") (2024年1月25日サントリーホール・ブルーローズにて演奏・収録)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

#224 多様性と形式感を併せ持つミヨー『二つのヴァイオリンのためのソナタ』(3)
14/11/2025 | 15 mins.
ダリウス・ミヨーの「2つのヴァイオリンとピアノのためのソナタ」の第3楽章です。この作品には様々な作曲家の作風が混在していますが、この多様性は、彼がパリ音楽院で師事したポール・デュカスの影響が流れとしてあるかもしれません。デュカスは、表面的なものだけでなく、深みのある音を考える作曲家であり、ミヨーもその深い思考を教え子に引き継がせた可能性があります。第二次世界大戦期以降は、カリフォルニアのミルズカレッジなどで教鞭を取るなど、アメリカで活躍。彼の著名な教え子としてデイヴ・ブルーベック、バート・バカラック、フィリップ・グラスといった幅広い分野の音楽家がいます。今回の演奏に使用されたストラディヴァリウスの貴重な名器としての来歴や、それを貸与する日本音楽財団の活動についても触れられています。中田昌樹さんのFacebookでは番組内の内容をさらに視覚的にも拡めています。ぜひご覧ください。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】ダリウス・ミヨー作曲 『2つのヴァイオリンのためのソナタ』第3楽章 樫本大進 /ヴァイオリン(Strad. Violin1722"ジュピター" 佐藤俊介 /ヴァイオリン(Strad. Violin1725"ウィルヘルミ") 市野あゆみ/ピアノ(2004年4月4日Universität Mozarteum Salzburg Großer Saal にて演奏・収録)【協力】日本音楽財団 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団



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